お腹の不調で悩む読者の皆様、こんにちは。消化器内科医のDr.choli(ドクターチョリ)です。
この記事では、過敏性腸症候群(IBS)の症状緩和に役立つ可能性がある「プロバイオティクスサプリメント」について、専門的な視点から解説します。
IBSの症状は日常生活に大きな影響を及ぼし、
「サプリが多すぎて、どれを選べばいいか分からない」
「本当に自分に合うものがあるのだろうか」
といった不安を抱えていらっしゃるかと思います。市場には様々な製品が溢れており、選択に迷うのも当然ですよね。
この記事を読めば、IBSに悩むあなたが、科学的根拠に基づいた信頼できるプロバイオティクスサプリの選び方を理解し、ご自身に合ったセルフケアを始める一歩を踏み出せます。
IBSのつらい症状、プロバイオティクスが希望になるかも
過敏性腸症候群(IBS)は、お腹の痛みや不快感、下痢や便秘といった便通異常が続く、多くの方が悩まれている疾患です。その原因は一つではなく、腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)の乱れ、腸の知覚過敏、そして脳と腸が互いに影響し合う「脳腸相関(のうちょうそうかん)」の異常など、様々な要因が複雑に関係していると考えられています。
近年、この乱れた腸内環境を整える「プロバイオティクス」が、IBSの症状を和らげる可能性について注目が集まっています。しかし、数多くの製品の中から、ご自身に合った、信頼できるサプリメントを選ぶのは至難の業でしょう。消化器内科医として多くの患者さんと接する中で、その悩みの深さを日々感じています。
この記事では、IBSの症状緩和を目指す上で知っておくべきプロバイオティクスの知識と、私の専門的な視点から「選ぶべきサプリメントの5つのポイント」を分かりやすくお伝えします。
選び方の5つのポイント:あなたに合ったプロバイオティクスを見つけるために

プロバイオティクスとは、腸内フローラのバランスを改善することによって、私たちの体に良い影響を与える生きた微生物のことです。IBSの患者さんの腸内は、健康な人と比べて細菌のバランスが異なっていることが報告されています。
プロバイオティクスを選ぶ際に、特に注目していただきたいポイントは以下の5つです。
1. 科学的根拠(エビデンス)が示されているか
日本の「IBS診療ガイドライン」でも、プロバイオティクスはIBSの症状に対して有用な選択肢の一つとして推奨されています。これは、質の高い複数の研究によって、その有効性を示唆する報告が集まっていることを意味します。製品を選ぶ際は、含まれている菌株に、IBS症状の改善に関する臨床研究の報告があるかどうかが一つの判断基準になります。
2. 菌の「種類(菌種)」と「個性(菌株)」
プロバイオティクスには非常に多くの種類があり、その働きは菌の「種類(例:ビフィズス菌)」だけでなく、さらに細かい「個性(例:ビフィズス菌〇〇株)」によって異なります。
IBSの治療においては、特に「ビフィズス菌」や「乳酸菌」の有用性が多く報告されています。単一の菌株だけでなく、複数の菌株を組み合わせた「マルチストレイン」の製品も、より多角的なアプローチが期待できます。
3. 自分のIBSタイプや体質との相性
IBSには、主に下痢型、便秘型、混合型があります。プロバイオティクスとの相性も、このタイプによって変わることがあります。例えば、一部の乳酸菌は人によっては便を硬くする可能性も示唆されています。
また、効果の現れ方には個人差が大きいのがプロバイオティクスの特徴です。まずは2週間~1ヶ月程度試してみて、ご自身の体調の変化を注意深く観察することが大切です。
4. 善玉菌のエサとなる「プレバイオティクス」の存在
プロバイオティクスの働きを助ける「プレバイオティクス」(オリゴ糖や食物繊維など)を一緒に摂ることを「シンバイオティクス」と呼びます。善玉菌(プロバイオティクス)とそのエサ(プレバイオティクス)を同時に摂取することで、相乗効果が期待できる可能性があります。
5. 安全性と継続できる価格か
プロバイオティクスは基本的に安全性が高いとされていますが、アレルギーをお持ちの方は、添加物など原材料の表示を必ず確認しましょう。また、効果を実感するためには継続が重要ですので、無理なく続けられる価格であることも大切なポイントです。
【医師が解説】IBS改善に役立つプロバイオティクスの種類5選

上記の選び方を踏まえ、具体的にどのような種類のサプリメントを探せばよいのか、5つのタイプに分けてご紹介します。これは特定の商品をおすすめするものではなく、あくまでサプリメント選びの「指針」としてご活用ください。
1. ビフィズス菌を主成分とするサプリメント
IBSの患者さんでは腸内のビフィズス菌が減少している傾向があるため、これを補うことは理にかなっています。特に「ビフィズス菌(Bifidobacterium)」と明記され、できれば「〇〇株」といった菌株名まで記載のある製品が、研究に基づいている可能性があり信頼性が高いでしょう。
2. 乳酸菌(ラクトバチルス属など)を含むサプリメント
乳酸菌は腸内を酸性に保ち、悪玉菌の増殖を抑える働きが期待できます。特に「ラクトバチルス(Lactobacillus)属」は、IBS症状への有効性が報告されている菌株が多く存在します。ご自身の便通タイプ(便秘型か下痢型か)を考慮し、製品のレビューなども参考にしつつ慎重に選びましょう。
3. 複数の菌種を組み合わせた「マルチストレイン」サプリメント
多様な菌を一度に摂取できるのが利点です。「複数の乳酸菌・ビフィズス菌を配合」といった記載のある製品がこれにあたります。様々な角度から腸内環境にアプローチしたい場合に適しています。
4. プレバイオティクスも配合された「シンバイオティクス」製品
原材料名に「オリゴ糖」「食物繊維」といったプレバイオティクス成分が含まれているかを確認しましょう。
プレバイオティクスの中には、IBSの症状を悪化させる可能性のある高FODMAP(フォドマップ)食品に該当するものもあります。少量から試すなど、ご自身の体調をよく観察してください。
5. 特定の研究で有効性が報告された菌株を含む製品
少し上級者向けですが、IBSに関する研究で有効性が報告されている特定の菌株(例:Bifidobacterium infantis 35624株や、複数の菌株を組み合わせた特定の製剤など)と同じ、あるいは類似の菌株を含む製品を探す方法です。製品サイトやパッケージで、どのような菌株が使われているか確認してみましょう。
プロバイオティクスは治療の一部です

私の臨床経験上、IBS治療で最も重要なのは、生活習慣の改善、食事療法、そして必要に応じた薬物療法などを組み合わせた、多角的なアプローチです。 プロバイオティクスサプリメントは、あくまでその強力なサポーターの一つだと考えてください。
食事では、脂質の多い食事やカフェイン、香辛料を控えることや、低FODMAP食を試すことなどが症状の軽減につながる可能性があります。また、ウォーキングなどの適度な運動も、IBS症状の改善に有効であると報告されています。
プロバイオティクスを試す際には、こうした生活習慣の見直しも同時に行うことで、より良い変化が期待できるでしょう。
もし症状が続く、あるいは悪化するような場合は、決して一人で抱え込まず、消化器専門医にご相談ください。他の病気が隠れていないかを確認し、あなたに合った次の治療法を一緒に考えていくことが可能です。
プロバイオティクスでIBSを改善しよう!
過敏性腸症候群(IBS)のつらい症状も、適切なアプローチで改善が期待できます。プロバイオティクスは、その有効な選択肢の一つです。
サプリ選びの基本: 科学的根拠、菌の種類と個性(菌株)、体質との相性を重視しましょう。
おすすめの種類: 「ビフィズス菌」「乳酸菌」「マルチストレイン」「シンバイオティクス」といった特徴から探してみましょう。
個人差の理解: 効果には個人差があるため、2週間~1ヶ月は試して自分に合うか見極めることが大切です。
治療の全体像: サプリはあくまで補助的な役割です。食事や運動などの生活習慣改善と組み合わせることが、より良い結果につながります。
IBSの症状に悩むあなたが、この記事を通じてご自身の腸と心に寄り添ったケアを見つけられるよう、心から願っています。