お腹の不調と心のSOSは「脳腸相関」で繋がっている
お腹の不調を抱えているあなたへ。毎日のつらい症状に加えて、「もうダメだ」と感じるほどの心の苦しさを抱えている方もいらっしゃるかもしれませんね。友人や家族には心配をかけたくなくて、一人で抱え込んでしまっている…そんな方も少なくないのではないでしょうか。
消化器内科医として、まず皆さんに知っておいてほしいことがあります。それは、過敏性腸症候群(IBS)や機能性ディスペプシア(FD)といったお腹の症状は、実は心と密接に関わっているということです。医学的には「脳腸相関(のうちょうそうかん)」(参考:ストレスでお腹が痛くなる本当の理由とは?脳と腸の深い関係「脳腸相関」を解説)と呼ばれ、脳と腸が互いに影響し合っていることが明らかになっています [機能性消化管疾患診療ガイドライン 2020―過敏性腸症候群(IBS)(改訂第 2版), 機能性消化管疾患診療ガイドライン 2021―機能性ディスペプシア(FD)(改訂第 2版)]。ストレスや不安、抑うつといった心理的な要因が、お腹の症状を悪化させたり、時には発症のリスクを高めたりするという報告もあります [機能性消化管疾患診療ガイドライン 2020―過敏性腸症候群(IBS)(改訂第 2版), 機能性消化管疾患診療ガイドライン 2021―機能性ディスペプシア(FD)(改訂第 2版)]。
特にIBSの患者さんでは、自殺行動のリスクが高いという調査結果もあり、これは抑うつ状態とは別に、IBSに特有の因子が関係している可能性も指摘されています [機能性消化管疾患診療ガイドライン 2020―過敏性腸症候群(IBS)(改訂第 2版)]。追い詰められた時に一人で抱え込まず、心のSOSを発することは、症状の改善にも繋がる大切な一歩です。
この記事では、つらい時に「誰かに話したい」と感じた時に、安心して利用できる心のサポートをご紹介します。今回ご紹介する情報は、現行の消化器病診療ガイドラインに直接記載されているものではありませんが、私の臨床経験や一般的な医療の観点から、皆さんの「心の緊急避難場所」となりうるものです。
心の相談窓口を選ぶ際のポイント
「辛い時 相談」で検索しているあなたは、きっと、ご自身の状況に合った、安心できる相談先を探していらっしゃるはずです。ここでは、心の相談先を選ぶ上で、医学的な視点も踏まえていくつかポイントをお伝えします。
- 秘密が守られるか: 誰にも言えない悩みを打ち明けるわけですから、話した内容が外部に漏れないことは最も重要です。専門の相談窓口では、守秘義務が徹底されています。
- 専門性があるか: 心のケアには、専門的な知識と経験が必要です。カウンセリングや心理療法(認知行動療法、催眠療法など)(参考:思考のクセを整える。「マインドフルネス・認知行動療法」おすすめアプリ3選)はIBSやFDの症状改善に有用であると報告されており [機能性消化管疾患診療ガイドライン 2020―過敏性腸症候群(IBS)(改訂第 2版), 機能性消化管疾患診療ガイドライン 2021―機能性ディスペプシア(FD)(改訂第 2版)]、心身の専門家によるサポートは大きな支えとなるでしょう。
- アクセスしやすいか(無料・低費用か): 経済的な負担なく利用できる窓口は、切羽詰まった状況で大きな助けとなります。
- 時間や場所の制約が少ないか: 自身の都合に合わせて、電話やオンラインなど、自宅からでも利用できる形態だと、体調がすぐれない時でも利用しやすいですね。
- 判断しないこと: あなたの感情や状況を、良し悪しで判断せず、ただ受け止めてくれる姿勢があるかどうかも大切です。
お腹の不調と心のつらさを相談できる「緊急避難場所」5選
(※繰り返しになりますが、以下にご紹介するサービスや窓口は、日本の消化器病診療ガイドラインに直接推奨されているものではなく、一般的な心の支援リソースです。実際の利用にあたっては、それぞれのサービスの詳細をご確認いただき、ご自身の判断で選択してください。掲載情報は一般的なサービスの種類をイメージして記述しています。)
1. 電話相談窓口(緊急性・匿名性重視)
おすすめ理由: 「今すぐ誰かに話したい」という緊急性の高い状況で、最も手軽に利用できる選択肢の一つです。多くの場合、匿名で相談でき、自分の名前や個人情報を明かす必要がないため、友人や家族には話しにくい内容でも安心して打ち明けやすいでしょう。24時間対応している窓口もあります。
注意点: 一般的な傾聴や心理的サポートが中心であり、詳細な医療的なアドバイスは得られない場合があります。
2. オンラインカウンセリング/チャット相談(手軽さ・プライバシー重視)
おすすめ理由: 自宅や慣れた場所から、顔を見せずにチャットで相談したり、ビデオ通話でカウンセリングを受けたりできます。移動の負担がないため、体調が優れない時でも利用しやすく、場所を選ばずに専門家と繋がれる利点があります。多くの場合、初回は無料で試せるサービスもあります。
注意点: インターネット環境が必要です。また、有料サービスの場合、料金体系を事前に確認しましょう。緊急性の高い危機的状況には向かない場合もあります。
3. 地域の精神保健福祉センター(無料・地域密着型)
おすすめ理由: 各都道府県・指定都市に設置されており、精神科医や保健師、精神保健福祉士といった専門家が、無料で心の健康に関する相談に応じてくれます。地域の情報に詳しく、必要に応じて医療機関や他の支援機関への橋渡しをしてくれることもあります。面談形式が基本です。
注意点: 予約が必要な場合が多く、即時の対応が難しいことがあります。
4. 精神科・心療内科(専門的医療サポート)
おすすめ理由: 「心の専門家」として、診断に基づいた薬物療法(例えば、IBSやFDの病態に関与する不安や抑うつに対して、抗うつ薬や抗不安薬(参考:IBSで処方される代表的な薬の種類)が検討されることがあります [機能性消化管疾患診療ガイドライン 2020―過敏性腸症候群(IBS)(改訂第 2版), 機能性消化管疾患診療ガイドライン 2021―機能性ディスペプシア(FD)(改訂第 2版)]。)や、心理療法(認知行動療法など)を本格的に受けることができます。特に、幻覚・妄想・パーソナリティ障害・軽躁症状・自殺の危険がある場合には、迅速な受診が推奨されます [機能性消化管疾患診療ガイドライン 2020―過敏性腸症候群(IBS)(改訂第 2版)]。(参考:IBSの病院選びガイド|消化器内科と心療内科どっち?)
注意点: 受診には費用がかかります(保険適用)。薬物療法には副作用のリスクや、抗不安薬の依存性の問題もあり、漫然とした使用は避けるべきとされています [機能性消化管疾患診療ガイドライン 2020―過敏性腸症候群(IBS)(改訂第 2版)]。医師と患者さんの良好な関係を築くことが、治療の成功に繋がると、私の臨床経験上、最も重要だと考えています。
5. 心理専門機関/カウンセリングルーム(心理療法専門)
おすすめ理由: 精神科や心療内科と連携しつつ、薬物療法ではない専門的な心理療法(認知行動療法や催眠療法、リラクセーション法など)に特化したサポートを受けたい場合に適しています。これらの心理療法は、機能性消化管疾患の症状改善に有効であることが、複数の研究で示されています [機能性消化管疾患診療ガイドライン 2020―過敏性腸症候群(IBS)(改訂第 2版), 機能性消化管疾患診療ガイドライン 2021―機能性ディスペプシア(FD)(改訂第 2版)]。
注意点: 医療保険が適用されない場合が多く、費用が高額になることがあります。また、専門的な知識や経験を持つ治療者を要するため、すべての医療機関で実施されているわけではありません [機能性消化管疾患診療ガイドライン 2020―過敏性腸症候群(IBS)(改訂第 2版)]。
【補足】心と体の両面からのアプローチが不可欠
お腹の不調と心のつらさは、多くの患者さんが誤解されていますが、切り離して考えることはできません。医学的には、「脳腸相関」(参考:「ストレスで腹痛」は気のせいじゃない!脳と腸の深い関係)という概念が重要視されており、消化管の運動異常や内臓知覚過敏、腸内細菌の変化だけでなく、心理社会的因子もIBSやFDの病態に深く関与していることがわかっています [機能性消化管疾患診療ガイドライン 2020―過敏性腸症候群(IBS)(改訂第 2版), 機能性消化管疾患診療ガイドライン 2021―機能性ディスペプシア(FD)(改訂第 2版)]。
心身両面からのアプローチが、症状改善への近道となります。今、もし心のSOSを感じたら、まずは気軽に話せる場所を見つけてみましょう。そして、可能であれば、消化器内科医であるあなたの主治医(参考:良いお医者さん・クリニックの見分け方)にも、心の状態について正直に話してみてください。主治医は、あなたの全身の状態を把握し、必要に応じて心療内科や精神科の専門医への紹介、あるいは適切な心理療法の提案も検討してくれるはずです。
まとめ:一人で抱え込まず、心のSOSを発信しよう
お腹の不調が続き、「もうダメだ」と感じるほどの心のつらさを抱えているあなたは、決して一人ではありません。
- 心と体は密接に繋がっています。特にIBSやFDの症状は心理的な影響を受けやすいと、医学的にも証明されています。
- 一人で抱え込まず、誰かに話すことが症状改善への大切な第一歩です。
- ご紹介したリストは、緊急時に活用できる心のサポートの一般的な種類です。
- 無料の電話相談やオンラインチャット、地域の相談窓口など、アクセスしやすい選択肢も多くあります。
- もし可能であれば、主治医にも心の状態を伝え、専門家への橋渡しを依頼しましょう。
あなたの「話したい」という気持ちを大切にしてください。あなたの心と体の健康を、私たち医療従事者もサポートしたいと願っています。