広告 基本と原因

【医師監修】IBSセルフチェック|下痢・便秘・混合型のタイプを診断

通勤電車でお腹が痛くなる、大事な会議中に急な便意に襲われる、何日も便が出ずにお腹が張って苦しい…。こうしたお腹の不調で長年悩んでいませんか? 

もしかしたら、その症状は過敏性腸症候群(IBS)かもしれません。

IBSは決して珍しい病気ではなく、多くの方が悩んでいます。そして、この病気にはいくつかのタイプがあり、ご自身の症状がどのタイプに当てはまるかを知ることが、適切な対策を見つけるための重要な第一歩となります。

消化器内科医として、まず皆さんに知っておいてほしいのは、IBSは決して「気のせい」ではなく、適切な知識と対策によって症状をコントロールできる病気だということです。

この記事では、あなたの症状がIBSに当てはまるかを確認できるセルフチェックと、IBSの主なタイプ(下痢型・便秘型・混合型)の見分け方を専門家の視点から分かりやすく解説します。病院を受診するべき目安も具体的にお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。

IBS(過敏性腸症候群)とは?専門医が解説する原因

IBSは、国際的な診断基準(Rome IV基準)で定義される「機能性消化管疾患」の代表的な病気です。機能性消化管疾患とは、内視鏡検査などで腸を調べても、がんや炎症といった目に見える異常(器質的疾患)がないにもかかわらず、お腹の不調が慢性的に続く状態を指します。

医学的には、IBSの根本には「脳腸相関(のうちょうそうかん)」の異常が深く関わっていると考えられています。脳腸相関とは、脳と腸が自律神経などを介して密接に連携し、互いに影響を及ぼし合う仕組みのことです。ストレスを感じるとお腹の調子が悪くなるのは、まさにこの脳腸相関によるものなのですね。

「機能性消化管疾患診療ガイドライン2020」によると、IBSの病態には、脳腸相関のほか、遺伝的要因、消化管の運動異常、内臓の知覚過敏、免疫、腸内細菌、心理社会的因子などが複雑に絡み合っているとされています。

医師監修】IBSセルフチェック:あなたは何タイプ?

ここからは、ご自身の症状を客観的に把握するための具体的なセルフチェック方法をご紹介します。3つのステップで進めていきましょう。

ステップ1:まずは危険な病気の可能性を除外する

IBSのセルフチェックで最も重要なのは、背景に大腸がんや炎症性腸疾患といった他の病気(器質的疾患)が隠れていないかを確認することです。

まず、以下の「警告症状・徴候」がないか確認してください。

  • 発熱
  • 関節痛
  • 血便(便に血が混じる)
  • 6ヵ月以内の意図しない3kg以上の体重減少
  • お腹にしこり(腫瘤)を触れる

次に、以下の「危険因子」に当てはまるものがないか確認しましょう。

  • 50歳以上で症状が始まった
  • ご自身や血縁者に大腸がんや炎症性腸疾患の経験者がいる

上記の警告症状や危険因子が一つでも当てはまる場合は、自己判断せずに必ず消化器専門医の診察を受けてください。ガイドラインでも、これらの場合は大腸内視鏡検査などが推奨されています。

また、健康診断などで以下の「検査異常」を指摘された場合も同様です。

  • 便潜血陽性
  • 貧血
  • 低蛋白血症
  • 炎症反応陽性(CRP高値など)

IBSと診断された方でも、他の病気を合併することがありますので注意が必要です。

ステップ2:IBSの国際的な診断基準(Rome IV基準)で確認

ステップ1の警告症状や危険因子に当てはまらない場合、次にIBSの診断基準に照らし合わせてみましょう。

国際的な診断基準であるRome IV基準の要点をまとめると、以下のようになります。

最近3ヶ月間において、お腹の痛みが平均して週に1回以上あり、その痛みが以下の3項目のうち2つ以上に関連している。

  • 排便と関連がある
  • 排便の回数の変化と関連がある
  • 便の形(見た目)の変化と関連がある

※この症状が6ヶ月以上前から続いていることが診断の前提となります。

この基準に当てはまる場合、IBSの可能性が考えられます。

ステップ3:便の状態でわかるIBSの3つのタイプ

ご自身の症状がIBSに当てはまる可能性があれば、次に便の形状からタイプを分類します。ここでは世界共通の指標である「ブリストル便形状スケール(Bristol Stool Form Scale)」を使います。下剤や下痢止めを使っていない状態で、あなたの便がどれに近いか確認してみましょう。

ブリストルスケール
  • IBS便秘型(IBS-C)
    ブリストルスケールのタイプ1(コロコロ便)またはタイプ2(硬い便)が25%以上を占め、かつタイプ6・7が25%未満。
  •  IBS下痢型(IBS-D)
    ブリストルスケールのタイプ6(泥状便)またはタイプ7(水様便)が25%以上を占め、かつタイプ1・2が25%未満。
  • IBS混合型(IBS-M)
    ブリストルスケールのタイプ1・2とタイプ6・7が、両方とも25%以上を占める(便秘と下痢を繰り返す)。
  • IBS分類不能型(IBS-U)
    便の形状異常の基準が、上記のいずれにも明確に当てはまらない。

ご自身のタイプを把握することが、治療法やセルフケアを選択する上で非常に重要になります。

セルフチェックでIBSかも?病院を受診すべき目安

セルフチェックでIBSの可能性を感じた場合、特に「ステップ1」で挙げた警告症状・危険因子・検査異常が一つでも当てはまる方は、ためらわずに消化器専門医を受診してください。

たとえ警告症状などがなくても、ご自身で判断に迷う場合や、症状によって日常生活に支障が出ている場合は、医療機関を受診することをお勧めします。IBSは日本の消化器内科を受診する患者さんの約3割を占めるほど、ありふれた病気です。

多くの患者さんが「このくらいで病院に行っていいのかな」と悩まれますが、IBSは放置して良い病気ではありません。症状が重症化すると生活の質(QOL)が著しく低下し、うつや不安といった心の問題につながる可能性もあります。適切な診断と治療を受けることで、症状の改善が期待できます。

IBSセルフチェック後の注意点

セルフチェックはあくまで目安です。自己判断で市販薬を長期間使い続けたり、他の病気の可能性を無視したりしないよう注意が必要です。

私の臨床経験上、最も重要なのは、自己判断で症状を複雑にしないことです。インターネットの情報だけで全てを解決しようとせず、専門家のアドバイスを求めるようにしてくださいね。

また、IBSの治療では「脳腸相関」へのアプローチ、つまりストレス管理も非常に重要になります。ご自身のストレスサインに気づき、心と体の両方をケアすることが、症状を和らげる鍵となります。

まとめ:IBSのセルフチェックは適切な対策への第一歩

過敏性腸症候群(IBS)は、腸に目に見える異常がないにもかかわらず、腹痛や便通異常が慢性的に続く病気です。

この記事でご紹介したセルフチェックを通じて、ご自身の症状のタイプをある程度把握できたのではないでしょうか。しかし、これは確定診断ではありません。特に、発熱、血便、体重減少といった警告症状がある場合や、ご自身で判断に迷う場合は、速やかに消化器専門医の診察を受けることを強くお勧めします。

IBSの病態は、脳と腸の連携(脳腸相関)の乱れやストレス、腸内環境など、様々な要因が複雑に絡み合っています。適切な診断のもと、ご自身のタイプに合った治療やセルフケアを組み合わせることで、つらい症状を和らげ、より快適な日常生活を送ることが期待できます。

一人で抱え込まず、専門家に相談することで、あなたの不安はきっと軽くなるはずです。

-基本と原因
-, , ,