基本と原因

なぜ男性より女性にIBSが多いの?考えられる3つの理由

「なぜか周りの女性にも同じような悩みの子がいる」

「もしかして、女性ホルモンとかが関係しているの?」

「女性特有の原因があるなら知っておきたい」

そう感じているあなた、もしかして、過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome; IBS)の症状にお悩みではないでしょうか。なぜ男性より女性にIBSが多いのだろう?と疑問に思うのは当然ですよね。

消化器内科医として、まず皆さんに知っておいてほしいことは、この疑問には科学的な根拠に基づいた理由が考えられるということです。この記事では、なぜ女性にIBSが多いのか、その背景にある体のメカニズムがどのように関わっているのかを、私、消化器専門医が科学的根拠に基づいて詳しく解説します。

女性にIBSが多いのは事実であり、その背景には複数の要因が考えられます

女性にIBSが多いのは統計的にも示されており、その理由は単一ではありません。主な要因として、有病率の統計的な性差IBSの病態における性差と症状の現れ方の違い、そして特定のIBS発症リスク因子における性差の3つが挙げられます。

性差がIBSにどう影響するか

私の臨床経験上、IBSの患者さんを診ていると、女性の割合が高いと感じることが少なくありません。実際に、国内外の複数の報告で、IBSの有病率には性差が認められています。

統計データに見る有病率の性差

IBSの有病率に関するメタアナリシス(複数の研究結果を統合して分析する手法)によると、世界の報告では男性のIBS有病率が平均8.9%であるのに対し、女性は14.0%と、女性の方が1.6倍多く発症しているとされています。

日本国内の調査でも、同様の傾向が確認されています。ある調査では女性のIBS有病率が15.5%に対し男性は12.9%、別の調査では女性の割合が男性の1.7倍有意に多い、と報告されています。

ただし、アジアのレビューでは男女差がないという報告も一部に存在し、地域や診断基準によって見解が異なる場合がある点は留意が必要です。

IBSの病態と症状の現れ方の性差

医学的には、IBSの病態そのものに性差がある可能性が指摘されています。メタアナリシスによると、女性は男性よりも腹痛を訴えやすく、便秘型IBS(IBS-C)が多いことが証明されています。一方で、男性は下痢型IBS(IBS-D)が多い傾向にあります。

これらの性差は、社会的要因だけでは説明しきれない部分があり、遺伝的要因もIBSの病態に関連している可能性が示唆されています。

感染性腸炎後のIBS(PI-IBS)発症リスクにおける性差

IBSの中には、急性胃腸炎に罹患した後に症状が続く「感染性腸炎後IBS(post-infectious IBS: PI-IBS)」と呼ばれるタイプがあります。このPI-IBSの発症リスク因子として、女性であることが明確に挙げられています。その他に、若年であることや、胃腸炎の発症中または発症前に心理的な問題を抱えていたことなどもリスク因子とされています。

女性ホルモンとIBSの関係について

読者の方の中には、「女性ホルモンがIBSの有病率に直接関係しているのでは?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。ソースの中では、IBSの病態に「神経伝達物質と内分泌物質」が関与すると説明されています。しかし、女性ホルモン(例えばエストロゲンやプロゲステロンなど)が、IBSの有病率の性差を直接的に説明する主な原因であるとは明確に記載されていません。

ただし、内分泌系全体が脳と消化管の相互作用(脳腸相関)に影響を与え、IBSの病態に関わる重要な要素であることは理解されています。

女性のIBSがもたらす具体的な症状と生活への影響

IBSの症状が女性において異なる形で現れることは、患者さんの日常生活やQOL(生活の質)に大きな影響を与え、治療のアプローチにも影響を及ぼします。

腹痛の訴えやすさ: 女性は男性よりも腹痛を訴えやすい傾向にあるため、日常生活での不快感や、仕事・学業への集中力の低下につながる可能性があります。

便通異常のタイプ: 女性に多いとされる便秘型IBS(IBS-C)は、頑固な便秘やそれに伴う腹部膨満感、不快感が強く、生活の質を著しく低下させる要因となりえます。別のIBS分類型との比較では、便秘型より下痢型と混合型のQOLがより悪かったとする報告もありますが、女性に多く見られる便秘型も、その症状のつらさからQOLに影響を与えることは想像に難くありません。

心理的影響: ストレスや心理的な異常がIBSの病態に深く関わっており、特に症状の重症度が増すほどその関与度も高まります。女性は不安やうつを合併しやすい傾向もあり、これがIBSの症状をさらに悪化させる悪循環につながる可能性も考えられます。

メカニズムを理解した上でのセルフケア

IBSの性差やメカニズムを理解することは、適切な対処法を見つける第一歩です。ここからは、あなたが今日からできる簡単なセルフケアや考え方を提案します。

医師との対話と正確な情報共有

ご自身の症状のタイプ(便秘型、下痢型、混合型など)や、(参考:生理前になるとIBSが悪化するのはなぜ?PMSとの関係と対策)など、女性特有と感じる変化があれば、遠慮なく医師に伝えましょう。これは、あなたに最適な治療法を見つける上で非常に重要です。

ストレスマネジメント

IBSの病態にはストレスが深く関わっています。日々の生活の中でストレスを自覚したときに、IBS症状が悪化する経験はありませんか? ストレスを完全に排除することは難しいですが、リラクセーション法や、趣味の時間を設けるなど、ご自身に合ったストレス解消法を見つけることが大切です。(参考:今日からできるストレスコーピング実践テクニック10選

生活習慣の改善

食事の見直し: 私が多くの患者さんにアドバイスしているのは、IBS症状を誘発しやすいとされる食品(脂質、カフェイン類、香辛料を多く含む食品や牛乳・乳製品など)を控えることです。(参考:IBSの人が避けるべき食べ物・飲み物ワースト5)特に乳製品は、乳糖不耐症のIBS患者さんで下痢を誘発することが知られています。

適度な運動: 適度な運動は、IBS症状の改善に有用であることが示唆されています。ウォーキングやヨガなど、無理なく続けられる運動を取り入れてみましょう。(参考:IBS改善におすすめの運動3選(ウォーキング・ヨガ・ストレッチ)とその理由

心理的ケアの検討

IBSの病態に心理的異常が大きく関与することが知られています。もしあなたが不安やうつといった心理的な問題を強く感じているのであれば、心療内科的治療(認知行動療法や催眠療法など)も症状の改善に有用であると推奨されています。(参考:IBSの病院選びガイド|消化器内科と心療内科どっち?)専門家による適切なサポートを受けることで、症状が大きく改善する可能性があります。

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まとめ

過敏性腸症候群(IBS)が女性に多く見られる背景には、単なる偶然ではなく、以下のような科学的要因が複雑に絡み合っています。

  • 世界的に見ても女性のIBS有病率が高いという統計的な事実があります。
  • IBSの病態そのものに性差が存在し、女性は腹痛を訴えやすく便秘型IBSが多い傾向にあります。
  • 特定のタイプである感染性腸炎後IBS(PI-IBS)の発症リスク因子として女性であることが挙げられています。
  • 「女性ホルモン」が直接的な原因として明記されているわけではありませんが、IBSの病態には内分泌物質が関与していることが示されています。

IBSは女性にとって特に身近な病気かもしれませんが、そのメカニズムを理解し、適切な生活習慣の改善や専門的なケアを続けることで、より快適な日常生活を送ることが期待できます。あなたの症状が少しでも楽になるよう、私たち消化器内科医が全力でサポートさせていただきます。

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