最近よく聞く「グルテンフリー」。IBS(過敏性腸症候群)の症状改善のためにグルテンフリーを試すべきか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。(参考:過敏性腸症候群(IBS)とは?原因、症状、治療法を医師が解説)
結論から言うと、IBSの人がグルテンフリーを試すことには一定の価値がありますが、すべての人に効果があるわけではなく、注意も必要です。
この記事では、IBSとグルテン、そして小麦との関係について詳しく解説し、どのように小麦製品と付き合っていくべきかのヒントを提供します。
グルテンとは?
グルテンは、小麦、大麦、ライ麦などの穀物に含まれるタンパク質の一種です。パンのもちもちとした食感や、うどんのコシを生み出すもとになっています。
IBSとグルテンの関係
なぜIBSの人がグルテンを避けると症状が改善することがあるのでしょうか。これには主に3つの可能性が考えられています。
1. セリアック病
セリアック病は、グルテンに対する免疫反応によって小腸が障害される自己免疫疾患です。IBSと症状が似ているため、IBSと診断されている人の中に未診断のセリアック病患者が含まれている可能性があります。(参考:セリアック病とは?IBSとの違いや検査、治療について)
セリアック病の場合は、厳格なグルテンフリー食が唯一の治療法です。
2. 非セリアック・グルテン過敏症(NCGS)
セリアック病や小麦アレルギーではないものの、グルテンを摂取することでお腹の不調や頭痛、倦怠感などの症状が出る状態です。IBS患者さんの中には、このNCGSを併発している人がいると考えられています。
3. FODMAP(フルクタン)の影響
実は、IBSの人が小麦を避けて調子が良くなる一番の理由として注目されているのが、グルテンではなく、小麦に含まれる「フルクタン」という糖質の影響です。
フルクタンは「FODMAP(フォドマップ)」の一種で、小腸で吸収されにくく大腸で発酵しやすいため、ガスや腹痛、下痢などのIBS症状を引き起こす原因となります。(参考:小麦に含まれるフルクタンとは?IBS症状の原因になる可能性)
IBSの食事療法の基本である「低FODMAP食」では、このフルクタンを多く含む小麦製品を一時的に制限します。
グルテンフリー=IBSに効果あり?
つまり、IBSの症状が小麦によって引き起こされている場合、その原因は「グルテン」そのものよりも、「フルクタン(FODMAP)」である可能性が高いのです。
セリアック病やNCGSが疑われる場合は別ですが、多くのIBS患者さんにとっては、厳密な「グルテンフリー」を目指す必要はなく、「低FODMAP食」の一環として小麦製品を減らす(またはフルクタンの少ないものを選ぶ)アプローチが現実的です。
グルテンフリーの注意点
自己判断で極端なグルテンフリー食を始めると、栄養バランスが偏ったり、食物繊維が不足したりするデメリットもあります。
また、グルテンフリー製品の中には、米粉やタピオカ粉など、別の高FODMAP食品が使われている場合もあるため注意が必要です。(参考:IBS患者が避けるべき食べ物・飲み物【高FODMAP食リスト】)
もしセリアック病を疑う場合は、グルテンフリーを始める前に必ず医師に相談し、適切な検査を受けるようにしてください。
小麦との上手な付き合い方
IBSであっても、小麦製品を完全に排除する必要はありません。
まずは低FODMAP食を試して、自分がどの程度の量のフルクタン(小麦)なら耐えられるのか(耐容能)を知ることが大切です。
例えば、日本で一般的に食べられている食パンやうどんは高フルクタンですが、ヨーロッパの伝統的な製法(長時間発酵)で作られたサワードウパンや、パスタ(特にアルデンテ)は、比較的フルクタンが少ないとされています。
また、米粉パンや十割そばなど、グルテンフリーかつ低FODMAPの代替品を上手に取り入れるのも良い方法です。
まとめ
IBSの症状改善のためにグルテンフリーを試すことは選択肢の一つですが、その背景にはセリアック病、NCGS、そしてFODMAP(フルクタン)という異なる要因が関わっています。
多くのIBS患者さんにとっては、厳格なグルテンフリーよりも、低FODMAP食の一環として小麦(フルクタン)の摂取量を調整する方が効果的です。
自己判断で極端な食事制限はせず、専門家のアドバイスを受けながら、自分に合った小麦との付き合い方を見つけていきましょう。