運動・セルフケア

お腹の不調は「冷え」が原因かも? 腸を温める「温活」のススメ。腹巻・入浴の効果とは

「なんだかお腹が冷える…」「お腹を温めると、少し楽になる気がする」。 過敏性腸症候群(IBS)や機能性ディスペプシア(FD)といったお腹の不調に悩むあなたは、そう感じることがありませんか?特に夏場でも、冷房や冷たい飲み物で体が冷え、お腹の症状が悪化するのではないかと不安に感じる方もいるかもしれません。

消化器内科医である私のもとにも、お腹の不調に悩む方が多くいらっしゃいます。この記事では、あなたが感じている「体を温めること」がなぜお腹の不調に役立つ可能性があるのか、そして、より効果的な「即効性のある対策」と「日常でできる根本的な予防法」について、科学的根拠に基づいて詳しく解説していきます。

この記事を読めば、お腹の不調に対するあなたの不安が和らぎ、今日から実践できる具体的なセルフケアの方法がきっと見つかるはずです。

結論:心身のリラックスが症状緩和の鍵、「温活」もその一助に

過敏性腸症候群(IBS)の症状改善には、心身のリラックスが非常に重要です。体を温める「温活」は、リラックス効果を通じて、間接的にIBS症状の緩和につながる可能性があります。

現在の診療ガイドラインでは、「腹巻」や「入浴」といった特定の温活がIBS症状に直接的な効果をもたらすという明確な科学的根拠は示されていません。しかし、多くの患者さんがこれらによってお腹の不調が和らぐ、安心するといった効果を実感されています。これは、温めることによる心身のリラックスが、IBSの病態に深く関わる「脳腸相関(のうちょうそうかん)」に良い影響を与えているためと考えられます。(参考:ストレスでお腹が痛くなる本当の理由とは?脳と腸の深い関係「脳腸相関」を解説

原因解説:IBSの病態と「脳腸相関」の重要性

過敏性腸症候群(IBS)は、検査をしても炎症や腫瘍などの明らかな異常が見つからないにも関わらず、腹痛や便通異常(下痢、便秘、またはその両方)が慢性的に続く病気です。医学的には、その病態に「脳腸相関」と呼ばれる脳と消化管の密接な関係が深く関与しているとされています。

脳腸相関とは、脳と消化管が互いに影響し合うメカニズムのことです。ストレスを感じるとお腹が痛くなったり、下痢をしたりする経験は、多くの方がお持ちではないでしょうか。まさにこの現象こそが脳腸相関の一例です。

IBSの患者さんでは、ストレスを感じた際に消化管の運動が亢進したり、脳の中枢神経が過敏になったりすることが報告されています。また、人生早期の心的外傷体験がIBS発症のリスクを高めることも知られています。さらに、うつや不安といった心理的異常がIBSの症状を重症化させる一因となることも明らかになっています。

このように、IBSは単に消化管だけの問題ではなく、ストレスや心理的状態が複雑に絡み合い、脳と腸のコミュニケーションに影響を及ぼすことで症状が現れると考えられています。体を温めることがリラックスを促し、この脳腸相関を介して症状の緩和に繋がる可能性は十分に考えられます。

https://reliecho.com/brain-gut-connection-stress

具体的な方法:状況に応じたお腹の不調対策

IBSやFDといったお腹の不調の対策は、今すぐできる「応急処置」から、日々の生活で取り組む「根本対策」まで様々です。消化器専門医である私の臨床経験上も、多くの方がこれらの対策によって症状の改善を実感されています。

今すぐできる応急処置:不快感を和らげるために

お腹の不調が急に現れた時、すぐに試せる対策をご紹介します。

  • お腹を直接温める
    • 湯たんぽや温かいタオルを当てる:優しくお腹を温めることで、筋肉の緊張がほぐれ、リラックス効果が期待できます。
    • 腹巻を着用する:特に冷えを感じやすい季節や冷房の効いた場所では、腹巻がお腹を冷えから守り、心地よい温かさを保つのに役立ちます。
    • 温かいお風呂に入る:シャワーだけでなく、湯船に浸かって体を芯から温めることは、全身のリラックスを促し、心身の緊張を和らげる効果が期待できます。現在のソースには直接的な記述はありませんが、リラクセーションは心理療法の一つとして有効であるとされています。
  • 深呼吸や簡単なリラクセーション

    ゆっくりと深い呼吸を繰り返すことで、自律神経のバランスを整え、心の落ち着きを取り戻す手助けになります。(参考:お腹の不調と不安に。5分でできる「マインドフルネス呼吸法」)これは心理療法の一部として、IBSの症状改善に繋がる可能性があります。


事前にできる準備:症状の悪化を防ぐために

症状が出る前にできることとして、体を冷やさないための工夫や、ストレスへの対処が挙げられます。

  • 温かい飲み物・食べ物の摂取

    冷たいものばかりではなく、体を温める温かいスープや飲み物を意識的に取り入れましょう。


  • ストレスを管理する工夫

    IBSの症状は、ストレスを感じた時に悪化する傾向があります。日頃から自分なりのストレス解消法を見つけ、実践することが重要です。(参考:今日からできるストレスコーピング実践テクニック10選)趣味に没頭する、軽い運動をするなど、心身がリフレッシュできる時間を作りましょう。


日常でできる根本対策:長期的な症状改善を目指して

多くの患者さんが誤解されていますが、IBSの治療は薬物療法だけでなく、生活習慣の改善が非常に重要です。

  • 食事の見直し
    • 誘発しやすい食品を控える:脂質、カフェイン類、香辛料を多く含む食品、そして牛乳や乳製品(乳糖不耐症の場合)は、IBS症状を誘発しやすいと報告されています。これらの摂取量を調整してみましょう。(参考:IBSの人が避けるべき食べ物・飲み物ワースト5
    • 低FODMAP(フォドマップ)食:海外の研究では、特定の糖質を制限する低FODMAP食がIBSの症状改善に有用であると報告されています。これは専門的な知識が必要なため、自己判断ではなく医師や管理栄養士に相談することをお勧めします。
  • 運動習慣

    適度な運動は、IBS症状の改善に繋がることが示されています。ウォーキング、ヨガ、エアロビクスなど、無理なく続けられる運動を生活に取り入れてみましょう。


  • 質の良い睡眠の確保

    IBSは睡眠障害と有意に関連しているという報告があります。(参考:なぜ休んでも疲れが取れない?自律神経の整え方)質の良い睡眠を確保することは、体全体の調子を整える上で重要です。ただし、睡眠の改善がIBS症状に直接的な改善をもたらすという明確なエビデンスはまだ確立されていません。


  • 心理的ケア

    うつや不安などの心理的異常はIBSの病態に深く関与しています。心療内科的治療として、認知行動療法、催眠療法、リラクセーションなどがIBSに有用であると推奨されています。(参考:【比較】オンラインカウンセリングおすすめ3選。IBSの悩みを相談できるのは?)必要であれば、専門家への相談も検討しましょう。


また、医師との良好な関係を築くことも、治療の継続や症状改善において重要であるとされています。(参考:良いお医者さん・クリニックの見分け方 5つのチェックポイント

https://reliecho.com/low-fodmap-diet-beginner
https://reliecho.com/ibs-recommended-exercise

注意点:やりがちなNG行動

  • 過度な冷え対策による逆効果

    夏場でも冷房を避けすぎる、過剰な厚着をするなど、極端な冷え対策は、かえって体に負担をかけたり、汗冷えによる別の不調を引き起こしたりする可能性があります。適度な温度調整を心がけましょう。


  • 自己判断での極端な食事制限

    症状を改善させたい一心で、自己判断で多くの食品を制限してしまうと、栄養不足になる恐れがあります。食事療法を行う際は、必ず医師や管理栄養士と相談しながら進めましょう。


  • アルコールや喫煙

    過度なアルコール摂取は下痢症状を悪化させる可能性が指摘されていますが、軽度から中等量の摂取や喫煙がIBS症状を改善するという明確なエビデンスは報告されていません。


まとめ

お腹の不調は、日常生活に大きな影響を及し、不安を感じやすいものですよね。体を温める「温活」は、心身のリラックス効果を通じて、IBS症状の緩和に役立つ可能性のあるセルフケアの一つとして有効です。

しかし、最も大切なのは、IBSの病態である「脳腸相関」を理解し、ストレス管理、食事の見直し、適度な運動、質の良い睡眠といった生活習慣全体をバランス良く改善していくことです。

IBSの症状は一人ひとり異なります。もし、ご自身でのセルフケアだけでは改善が見られない場合は、迷わず消化器専門医にご相談ください。専門医として、皆さんがより快適な日々を送れるよう、これからもサポートしてまいります。

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