仕事中の突然の腹痛…「もう無理」そのストレス、IBSかもしれません
仕事中の突然の激しい腹痛、会議中の冷や汗、通勤電車の途中下車…過敏性腸症候群(IBS)と診断されてから、仕事への向き合い方に悩んでいませんか?「このまま今の職場で働き続けられるのだろうか」「どんな仕事ならIBSと両立できるのだろうか」と、限界を感じている方もいらっしゃるかもしれませんね。
それは本当に辛いことですよね。消化器内科医として、多くのIBS患者さんが仕事と症状の間で同様の悩みを抱えていることを私も痛感しています。しかし、諦める必要はありません。適切な対策を知り、あなたのIBSと両立しやすい働き方を見つけることで、症状はきっと和らぎ、充実した毎日を送れるようになります。
この記事では、あなたのIBS症状を仕事と両立しながらコントロールするための「即効性のある対策」と「根本的な予防法」について、科学的根拠に基づき詳しく解説します。
IBSと仕事、まず最も重要なのは「ストレスを最小限に抑える働き方」を見つけること
IBSの症状を和らげ、仕事と両立するために最も簡単で効果的な対策は、まず「ストレスを最小限に抑える働き方を見つけること」です。
IBSの病態には、脳腸相関(のうちょうそうかん)が深く関与しており、ストレスによって症状が悪化することが医学的に証明されています。(参考:「ストレスで腹痛」は気のせいじゃない!脳と腸の深い関係)脳と腸は密接に連携しており、精神的なストレスは消化管の運動異常や内臓の過敏性を引き起こし、腹痛や便通異常を悪化させる可能性があるのです。
私の臨床経験上、この根本原因であるストレスに対処することが何よりも重要だと強く感じています。あなたがストレスを上手に管理し、またはストレスの少ない環境を選ぶことができれば、それだけでIBS症状は大きく改善する可能性があります。
なぜIBSは「仕事のストレス」で悪化するのか?
IBSの症状と仕事のストレスは、密接な関係にあります。その中心にあるのが、先ほど触れた脳腸相関(のうちょうそうかん)という仕組みです。脳と腸は自律神経やホルモン、免疫系などを介して常に情報交換をしており、互いに影響を及ぼし合っています。
ストレスを感じると、脳は腸に信号を送り、腸の動きが活発になりすぎたり、逆に鈍くなったりすることがあります。また、腸の感覚が過敏になり、通常では痛みを感じないような刺激でも、強い腹痛として感じてしまうことがあります。
特に、人生早期に経験したトラウマ的なストレスや、不安、うつといった心理的な問題は、IBS発症のリスクを高めることが多くの研究で報告されています。仕事においては、以下のような要素がIBS症状を悪化させるストレス要因となりやすいと考えられます。
- 不規則な勤務形態:例えば、日勤と夜勤が頻繁に入れ替わるようなローテーション勤務者は、IBSの発症頻度が高いという報告があります。これは生活リズムの乱れがストレスとなり、脳腸相関に影響を与えるためと考えられます。
- 精神的なプレッシャー:過度なノルマ、人間関係の複雑さ、責任の重さなど、精神的な負担が大きい仕事は、それ自体が大きなストレス源となり、IBS症状を悪化させる引き金となることがあります。
- 通勤ストレス:満員電車での通勤や長時間の移動も、身体的・精神的なストレスとなり、IBS症状に影響を与える可能性があります。
IBSと上手に付き合いながら働くための3ステップ
IBSと仕事とを両立させるためには、症状が出たときの「応急処置」から、日々の「事前準備」、そして「根本的な対策」まで、段階的に取り組むことが大切です。
1. 今すぐできる応急処置:突発的な症状への対処法
仕事中に急なIBS症状が出た場合に、すぐに実践できる対策です。
- 休憩とリラクセーション: ストレスを感じたら、数分でも良いので短い休憩を取り、深呼吸や簡単なストレッチでリラックスを試みましょう。(参考:5分でできるマインドフルネス瞑想。不安を和らげる呼吸法)心身医学的治療として、リラクセーション法がIBS症状の改善に有用であることが、診療ガイドラインでも示唆されています。可能であれば、静かな場所で目を閉じるだけでも効果が期待できます。
- 適切な薬剤の活用: 下痢や便秘の症状が強い場合は、症状を和らげる薬を使いましょう。(参考:IBSで処方される代表的な薬の種類と効果、副作用まとめ)例えば、ポリカルボフィルカルシウムのような高分子重合体は、便通異常や腹痛の改善に有用であると報告されています。私は消化器内科医として、症状がひどい時には我慢せず、適切な薬剤の使用も考慮すべきだと考えています。
- 食事の調整: 緊急時には、脂質、カフェイン、香辛料を多く含む食品はIBS症状を誘発しやすいので、摂取を避けるようにしましょう。(参考:IBSの人が避けるべき食べ物・飲み物ワースト5)また、過度な満腹感を避けるため、食事量を調整することも有効です。
2. 事前にできる準備:職場で困らないための工夫
日々の仕事の中でIBS症状を管理しやすくするための準備です。
- 職場への理解と配慮の要請: 可能であれば、信頼できる上司や人事担当者にIBSであることを伝え、休憩の取り方やトイレの利用について、個別の配慮を求める相談をしてみましょう。(参考:IBSについて、職場の上司や同僚にどこまで伝えるべきか?)(参考:産業医や社内カウンセリングルームの上手な活用法)すべての職場が対応できるわけではありませんが、理解を得ることで精神的な負担が軽減されることがあります。
- 通勤時間の調整: 満員電車など、通勤時のストレスが大きい場合は、時差出勤やリモートワークの可能性を探りましょう。通勤ストレスがIBS症状と関連する可能性も指摘されています。
- 心理カウンセリングの検討: もし、不安やうつ傾向が強いと感じる場合は、専門家による心理カウンセリングを検討するのも良い選択肢です。(参考:【比較】オンラインカウンセリングおすすめ3選。IBSの悩みを相談できるのは?)必要に応じて抗不安薬や抗不安薬の使用も選択肢となりますが、これは専門医との相談が不可欠です。診療ガイドラインでは、心身医学的治療として認知行動療法や催眠療法もIBSに有用であることが推奨されています。
3. 日常でできる根本対策:IBSと両立しやすい仕事の探し方・環境作り
IBSの症状を長期的に安定させるための、より本質的な対策と仕事探しの視点です。
A. ストレスの少ない職種・職場環境の選択
転職を考えている場合は、以下の点に注目して仕事を探してみましょう。
- 勤務形態の柔軟性: 不規則なシフト勤務よりも、規則的な勤務時間で働ける職場がIBS患者さんには望ましい傾向にあります。実際に、日勤夜勤のローテーション勤務者はIBS発症頻度が高いという報告もあります。リモートワークやフレックスタイム制など、柔軟な働き方が可能な職場も良い選択肢です。
- 人間関係: 職場の人間関係がIBSの大きなストレス要因となる場合は、チームワークよりも個人の裁量で仕事を進めやすい環境や、少人数の職場を検討するのも良いでしょう。面接時に職場の雰囲気やチーム構成について質問するのも一つの方法です。
- プレッシャーの少ない仕事内容: 過度なノルマや競争が少ない仕事を選ぶことで、精神的な負担を軽減できる可能性があります。ストレスはIBSの病態に深く関与するため、仕事内容のプレッシャーも慎重に評価すべきです。
B. 生活習慣の改善
仕事環境だけでなく、日々の生活習慣もIBS症状に大きく影響します。
- 運動療法: 適度な運動はIBS症状を改善すると報告されています。(参考:IBS改善におすすめの運動3選(ウォーキング・ヨガ・ストレッチ)とその理由)ウォーキング、ヨガ、軽度の有酸素運動など、無理なく継続できる運動を日常に取り入れてみましょう。
- 睡眠の質: IBS患者さんは睡眠障害と有意に関連していることが指摘されています。(参考:なぜ休んでも疲れが取れない?自律神経の整え方)十分な睡眠時間を確保し、規則正しい生活リズムを心がけることが、症状の安定につながります。
- 食事療法: 特定の食品がIBS症状を誘発することがあります。特に、FODMAP(発酵性の短鎖炭水化物)を多く含む食品を避ける食事療法が、症状の軽減に有用であると報告されています。(参考:【初心者向け】低FODMAP(フォドマップ)食事法とは?やり方を3ステップで解説)消化器内科医の立場から見ても、日々の食生活はIBS管理の基本です。具体的なFODMAP食については、専門家から指導を受けることをお勧めします。
- プロバイオティクス: 腸内環境のバランスを改善するビフィズス菌や乳酸菌などのプロバイオティクスは、IBS症状に有効であると推奨されています。(参考:プロバイオティクスはIBSの救世主?正しいヨーグルトやサプリの選び方)
C. 転職活動での注意点
転職は大きなストレス源にもなり得ます。IBSを抱えながら転職活動を行う際には、以下の点に注意しましょう。
- 情報収集の徹底: 応募先の企業の文化、働き方、社員の定着率など、入社後のストレス要因となりそうな点がないか、事前に徹底的に情報収集を行いましょう。
- 正直な情報共有のタイミング: 面接の場でIBSであることを伝える義務はありません。しかし、内定後や入社後に、体調面で配慮が必要な場合は、可能であれば上司や人事に相談できる環境かを見極めることも重要です。(参考:IBSを理由に休職や退職はできる?診断書の貰い方と手続き)
IBSと仕事の付き合い方で「やりがちだけど逆効果なNG行動」
IBSの症状に苦しむ中で、ついついやってしまいがちな、しかし症状を悪化させる可能性のある行動があります。
- 自己判断での薬の増減や中止: IBSの治療薬は、症状や病態に合わせて処方されます。症状が一時的に改善したからといって、自己判断で薬を止めたり、量を増やしたりするのは非常に危険です。必ず専門医の指示に従いましょう。(参考:良いお医者さん・クリニックの見分け方 5つのチェックポイント)症状の再燃や悪化につながる可能性があります。
- 刺激性下剤の常用: 便秘型IBSの場合、市販の刺激性下剤を常用すると、腸の機能が低下し、かえって薬剤への依存や症状の悪化を招く可能性があります。診療ガイドラインでも、刺激性下剤は原則として頓用(必要な時だけ使用)にとどめるよう提案されています。
- 情報過多による不安の増大: インターネット上にはIBSに関する様々な情報があふれています。(参考:【書評】IBSやストレスに関する悩みを解決してくれる本5選)しかし、中には科学的根拠に基づかない情報も少なくありません。そうした情報に振り回されると、かえって不安が増大し、IBS症状が悪化する可能性があります。多くのIBS患者さんは「破局思考」と呼ばれる、物事を悪い方向に捉えがちな傾向があることが指摘されています。信頼できる医療機関や専門家からの情報、そしてご自身の主治医のアドバイスを最も重視するように心がけましょう。
IBSは乗り越えられる。あなたのペースで、あなたに合った働き方を
IBSの症状を抱えながら仕事をするのは、想像以上に大変なことです。しかし、IBSは、決して一人で抱え込む病気ではありません。
この記事でご紹介したIBSと仕事を両立させるためのポイントをまとめます。
- ストレスを最小限に抑える働き方、特に勤務形態や職場環境を選ぶことが症状改善の鍵です。
- 急な症状には、休憩や適切な薬剤、食事調整で対応しましょう。
- 職場へIBSを伝え、配慮を求める準備も大切です。
- 専門医と連携し、適切な治療や心理的サポートを受けることが、症状安定への近道です。
- 運動、睡眠、食事といった規則正しい生活習慣は、IBS管理の基本です。
- 信頼できる情報源から必要な情報を選び取り、不安をいたずらに増大させないようにしましょう。
適切な対処と、あなたに合った仕事環境を見つけることで、きっとIBSの症状は和らぎ、これまで諦めていた充実した毎日を送れるようになります。私たちreliechoが、その一歩を踏み出すお手伝いをさせていただきます。焦らず、あなたのペースで進んでいきましょう。